【建築環境学の最前線】エアコンの26℃と、PS HR-Cの26℃は全く違う。
宿谷昌則教授の「エクセルギー理論」が明かす、夏の真の心地よさ
連載「建築物理学が解き明かす『呼吸する家』の真実」。前回は、夏の強烈な日射熱をブロックするためには、断熱材の「重さ(熱容量)」と、熱の到達を遅らせる「位相のずれ」が不可欠であるというお話をしました。
今回は、そのようにして重厚な断熱材(PAVATEX)に守られた家の中を、「どうやって冷やすのが、人間の身体にとって一番心地よいのか」という核心に迫ります。
日本の建築環境学の権威であり、心地よさの本質を追究するプロのバイブルとも言える宿谷昌則教授の「エクセルギー(Exergy)理論」を交え、少しだけマニアックな環境学の授業にお付き合いください。
1. 人間は「熱を生み出す小さなストーブ」である
そもそも、なぜ私たちは夏に「暑い、不快だ」と感じるのでしょうか。
人間の体は、生きているだけで常に体内で熱(エネルギーのゴミ=エントロピー)を生み出し続けています。私たちが「涼しくて心地よい」と感じるのは、外から無理やり冷やされた時ではありません。「体内で生まれた余分な熱を、周りの環境へスムーズに捨てることができた時」なのです。
宿谷教授の理論では、人間が体温調節のために消費するエネルギー(身体の頑張り)を「人体エクセルギー消費量」と呼びます。この消費量が少ない状態、つまり「身体が体温を一定に保つために、無理をしていない状態」こそが、真の「comfortable(快適・楽)」であると科学的に定義されています。
2. エアコン冷房が「だるくなる」科学的理由
日本の夏の定番であるエアコン(対流冷房)は、冷たい風を出して「空気の温度」を下げます。
設定温度を26℃にすれば、部屋の空気はたしかに26℃になります。しかし、壁や天井はどうでしょうか。軽い断熱材を使った一般的な家では、日射熱によって「壁や天井の表面温度(周壁平均温度)」は30℃近くに達していることがよくあります。
空気は26℃でも、壁は30℃。
この空間に人間が入るとどうなるか。身体は30℃の壁から「温かい放射熱」を浴び続けるため、体内の熱をうまく外に捨てることができません。結果として、体温を下げるために大量の人体エクセルギーを消費し(身体が無理をして働き続け)、その結果「冷房が効いているのに暑い」「だるい」「冷風が当たって不快」という、いわゆるクーラー病の状態に陥るのです。
3. ヴァルトの「PS HR-C(PSの冷暖房兼用放射パネル)」がもたらす究極の休息
ここで、私たちが標準採用している設備「PS社(放射冷暖房システム)」の真価が発揮されます。
「PS HR-C」は冷たい風を一切出しません。ラジエーターパネルの中に15℃前後の冷水を静かに循環させ、輻射熱(放射熱)の原理によって、「壁・床・天井の表面温度」そのものを26℃前後のひんやりとした温度に下げます。
この「周りの壁が冷やされた空間(冷放射エクセルギーを持つ空間)」に入ると、人間の身体はどう反応するでしょうか。
人間の身体から出る熱は、低い温度の壁やPSパネルに向かって、放射という形でスッと自然に吸い込まれていきます。風を当てて無理やり冷やさなくても、身体が「勝手に余分な熱を手放せる」環境になるのです。
宿谷教授の研究データによれば、この「放射冷房」の環境下では、エアコンによる対流冷房の環境下に比べて、人体エクセルギー消費量が約25%も少なく済むことが実証されています。
つまり、身体が体温調節のために頑張る必要がなくなり、自律神経が余計な緊張から解放されて、芯からの休息(リラックス)を得られるということです。
結び:身体が「楽」をする家づくり
「エアコンの冷たい風が苦手」という方は非常に多いです。それは単に風が当たるのが嫌なだけではなく、「熱い壁に囲まれたまま、冷気だけで無理やり冷やされるストレス」を、身体が本能的に拒絶しているからです。
PAVATEXの重さで外の熱を完全にブロックし、「PS HR-C」の放射冷房で内側の壁をひんやりと保つ。
この組み合わせが生み出す「夏の鍾乳洞のような自然な涼しさ」は、決して感覚的なものではありません。エクセルギー理論で証明された「人間が最も楽に生きられる環境」なのです。
この summer、ヴァルトのモデルハウスにお越しの際は、温度計の数値ではなく、ご自身の身体がどれだけ「ホッと休まるか」を、ぜひ肌で感じてみてください。風のない本当の涼しさを、ご体感いただけるはずです。
