先に、「建築物理学(Building Physics)」という少々堅苦しい視点から、家の「呼吸」について解説してきました。
ニール・メイ氏の論文(前回のコラム)を紐解き、透湿抵抗値や吸放湿容量、そしてセーフティネット理論について熱く語ってきましたが、ここまでついてきてくださった皆様は、間違いなく日本の家づくりにおける「数%」の知識層(いわゆる家づくりオタクの皆様)だと思います。
理論は、確かに重要です。
しかし、私たちは学者ではありません。私たちが物理学にこだわる理由はただ一つ。
「理にかなった家は、圧倒的に心地よい」という真実を、科学的に保証するためです。
今回は、難解な物理現象が実際の暮らしの中でどのような「感覚」として現れるのか。
ヴァルトのモデルハウスに一歩足を踏み入れた瞬間に感じる「ある違和感」についてお話しします。
ヴァルトの家に一歩入った瞬間の「違和感」の正体
1. 【冬の乾燥対策】喉が渇かない「空気の柔らかさ」
一般的な高気密高断熱住宅(ビニールクロス+石油系断熱材)にお住まいの方からよく聞く悩みは、「冬場の過乾燥」です。
暖房をつけると湿度が30%台まで下がり、朝起きると喉が張り付くような感覚に襲われる。加湿器がフル稼働し、窓ガラスには結露が流れる——。
ヴァルトの家では、この現象が起きません。
オーナー様が口を揃えて言うのは、「空気が柔らかい」という表現です。
就寝中に高まる室内の湿度を、壁や天井の自然素材(無垢材・塗り壁)が穏やかに吸収し、湿度の急上昇を抑制します。そして、室内が乾燥に傾き始めた際、蓄えた水分をゆっくりと放出することで、空間の湿度バランスを一定に保とうと働いてくれるのです。
機械的な加湿に頼らずとも、人間が最も健康的でいられる湿度40〜60%のゴールデンゾーンに、家そのものが自律的に調整しようとする。
この働きが、「柔らかい」という体感を生み出しているのだと思います。
2. 【梅雨の湿気対策】玄関の「サラサラ感」を生む木質繊維断熱材
次に驚かれるのが、梅雨や夏場の感覚です。
外気は湿度90%を超え、ジメジメとして不快な日。玄関のドアを開けてヴァルトの家に入ると、エアコンがガンガン効いているわけではないのに、なぜか「サラッ」としています。
「除湿機を隠しているんですか?」と聞かれることもありますが、違います。
これは、壁の中に充填された木質繊維断熱材(パヴァテックスなど)が持つ、圧倒的な「吸放湿キャパシティ」の仕業です。
連載第3項で触れた通り、木質繊維断熱材は、万が一の施工ミスや水蒸気流入があっても耐えられるよう、侵入する水分の約10倍もの許容量(セーフティネット)を持っています。
この巨大なタンクのような断熱材が、空気中の余分な水分を物理的に抱え込んでくれているのです。
ビニールで密閉された家では、湿気は逃げ場を失い、空気中に留まるか、カビの原因になります。しかし、呼吸する素材で構成された家は、余分な湿気を構造体全体で「一時預かり」し、晴れた日に外へ逃がします。
このダイナミックな水分の移動が、肌に触れる空気の「サラサラ感」として現れているのです。
3. 「新築の匂い」がしない。化学物質(VOC)を抑えた空気環境
最後に、嗅覚の話です。
多くの新築住宅には特有の「新築の匂い」があります。それは接着剤やビニール、建材から揮発する化学物質(VOC)の匂いです。
ヴァルトの家には、それがありません。
感じるのは、木と土、そして自然素材断熱材のほのかな香りだけです。
これは単に自然素材を使っているから、だけではありません。
「適切な湿度管理」ができているからです。
以前の記事(健康的な空気環境)でも触れた通り、湿度が適切に保たれた環境(40〜60%)では、化学物質の相互作用やオゾンの生成が抑制されることがわかっています。また、カビやダニの発生リスクも最小限に抑えられます。
「匂いがしない」「深呼吸したくなる」というのは、単なる気分の問題ではなく、空気中の不純物が少ないという物理的な証明なのです。
結論:数値の先にある、五感で感じる「本当の快適」
「数値(スペック)」はカタログで確認できます。
しかし、その数値がもたらす「住み心地(クオリティ)」は、実際にその場に身を置いてみなければ分かりません。
「理論はわかった。でも、本当にそんなに違うのか?」
そう思われた方こそ、ぜひモデルハウスへお越しください。
玄関を抜けた瞬間に感じる空気の透明感に、新鮮な印象を受ける方も多いでしょう。私たちは建築物理学に基づいて、科学的に『本当に心地よい空気』を設計しました。その確かな違いを、ぜひ体感してみてください。
皆様の鋭い「五感」での検証、実際に体感していただけるようお待ちしております。
▼ 長野の冬でも乾燥しない空気を体感する ▼